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ゲームレビュー
■ みつめてナイト ■

発売日1998/03/19
1999/11/25(ベスト)
メーカーコナミ
ジャンル恋愛シミュレーション
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Amazonで購入(ベスト版)
攻略本みつめてナイト 公式完全ガイドブック
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[ 1 ] クラッシュ信者 2005/08/13 21:57TOTAL:89
グラフィック難易度シナリオサウンド操作性
8 点2 点10 点10 点9 点
お買い得度お楽しみ度キャラクター度バグ対策度総合評価
10 点10 点10 点10 点10 点
1998年に発売された恋愛シュミレーションゲーム。前にも後にもこれ以上の傑作は存在しないと私は思う。このゲームの魅力を説明する前に「萌える」という単語について考察させてもらう。萌えるという言葉は本来、芽が出るという意味である。従って今日ネット上で頻繁に使われている意味は従来存在しなかった。今日ではその単語はコミック、アニメ及びCG等の創作された2次元の若い女に対して性的興味を覚えるという意味で主に使われている。性的興味という表現は決していやらしい意味で使ったわけではなく、プラトニックな感情すなわち、異性に対していいなと思う素朴な感情を意味する。萌えで重要視されるのは顔形であろう。つまり、対象がいかにかわいく見えるかである。性格もまた重要である。性格は重要な転機がない限り物語を通して統一されているのが良い。最近のゲーム製作でありがちなのは、分業体制をしいて2人以上のスタッフで1人のキャラクターの性格付けをすることだ。これは確かに効率が良いかもしれないが、キャラクターの性格が支離滅裂になる危険性をはらんでいる。酷い例を挙げると、場面が変わるごとに1人称、2人称の呼び方及び口調等が変わってしまうキャラクターをしばしば見かける。フルボイスが常識の時代になってからはキャラクターの声の質、すなわち、声質もまた萌えにおいて重要なファクターを占めるようになってきた。これは声優のスキルに100%依存している。当然声がかわいらしく、表現力が巧みな声優を登用するのが良い。しかしながら、ここで別の問題が生じる。達者な声優は社会的に評価され、自ずと知名度があがってくる。そうなると、キャラクター作りの影の立役者である声優の存在がそのキャラクターを凌駕し、萌えの対象をキャラクターから声優にシフトさせる人間が出てくる。彼らは一般的に声優オタと呼ばれている。彼らにとっての最重要項目はキャラクターそのものではなく、そのキャラクターをどの声優が演じているかである。私は声優の偉大さを認めるが、彼女たちに女優のように振舞って欲しくはないと思う。最後に、これはほとんど無視されがちであるが、私にとって最も重要な萌え要素は口調である。「あら」、「フフッ」及び「〜わよ」等、日本語には貴き女性語が存在する。前の2つは感動詞と笑い方であるが、英語では「Hey(ヘイ)」、「Ha-ha(ハハッ)」に相当する。これらはなんと下品で麗しさのかけらもない言葉であろうか。終助詞の雅さなど英語には存在すらしない。口調に萌える、これは表現豊かな日本語でしか有り得ない話だ。しかし、非常に残念なことに、日本人自身このことを軽視している。現在ではこの尊い女性語は創作物でさえ薄汚いオカマ専用の言葉に成り下がりつつある。言葉と文化は密接な関わりがある。最近の日本語の退廃ぶりを見ていると、貴重な日本文化の一つがまた駆逐されたと思われて、非常に遺憾である。
 さて、本題に移る。このゲームは私が上で述べた4つの萌え要素を満遍なく満たしているキャラクターが何人かいるように思われる。それ以外にも以下の独自性がこのゲームの優位性を確立する。
まずは、このゲームにおいて主人公は選択肢以外の会話はいっさい行わず、彼の心理描写に至っては全く存在しない。そこでは主人公がどういう人物なのかという規定がほとんどない。プレーヤーに知らされるのは彼がドルファン王国という異邦の国へ傭兵志願のために訪れたということだけだ。ドラクエほど極端ではないにしろ主人公=プレーヤーという現在ではほとんど有り得ないスタンスを、物語を通して潔く貫いている。他の恋愛系ゲームのように主人公の性格が出来上がってしまっていては、たいてい独りよがりの恋愛ドラマを見せ付けられるだけなので、私はこの点を大いに評価する。しかしながら、主人公の心理描写が無いため、ゲームの間を持たす存在がいなければ間違いなくこのゲームの物語は破綻をきたしてしまっていただろう。それを防ぐためにこのゲームでは主人公の分身である妖精のピコが存在する。彼女が彼の心理描写の代弁をしてくれるのだ。主人公が独りの時はおおむね彼女がゲームの方向性を決めてくれる。残念なことに、性格や口調により私は彼女をあまり好きにはなれなかった。主人公の代弁者は彼の分身という設定なので、どうせなら性別を男にしても良かったのではないかと私は思う。
2番目は、登場する女たちの心理描写もまた全く存在しない。私はどの物語においてもキャラクターの心理描写を嫌う。心理描写はどうしても説明過多になる傾向がある。そしてそれはキャラクターの人格を完全に規定してしまう。プレーヤーにキャラクターの人格を想像させる余地くらい残すべきである。
3番目は、ターゲットと決めた女との会話及びイベントを消化するのみでほとんどエンディングまで突き進むことができる。他のゲームでは嫌いな女とのイベントを強制的に見せられることもしばしばある。その点このゲームは特殊で、攻略する女以外は一部を除いて登場すらさせないこともできる。会話やイベントがほとんど1対1で行われるのも特徴的だ。他のゲームでは複数の女が一斉に出てくることが多く、わいわいがやがや混乱状態もいいところだ。当然そこでは彼女たちの存在感に差が現れ、なおざりにされ、脇役に転じる女も出てくることだろう。対照的に、イベント数等の優劣の差こそあれ、このゲームでは16人のメインキャラクター全てをプレーヤー自身の選択によりヒロインにする自由度があると言える。
次に、メインキャラ16人について私がもった印象を説明する。ネタバレを平気で述べるので、将来このゲームをプレーしたいと思っている人々は見ないでもらいたい。
ソフィア:このゲームの公式的なヒロイン。彼女は大人しい性格のため彼女が通っている学校ではほとんど目立たない存在である。しかしながら、清楚可憐な雰囲気がただよっており、ヒロインとしての風格は十分にある。家庭での苦労は並大抵のものではなく、彼女の父親は大量の借金をしている。その肩代わりに名門エリータス家の三男ジョアンと婚約している。彼は身分と金以外何のとりえもない出来損ないで、彼女は言葉には言えないものの、内心彼を本当に嫌っている。彼女は物語のエンディングにおいて彼との婚約を個人的に破棄し、主人公と駆け落ちする。それはあたかも戦前の家父長制から戦後の個人主義に移行する日本人の決意と同じようなものだ。しかし、それには大きな痛みも伴う。彼女の家族はエリータス家にどのような制裁を受けているのか。それを考慮に入れると、彼女の決断は正しかったのか、それとも・・・
ハンナ:典型的なボーイッシュ娘。それ以上は何も言うまい。
ロリィ:名前の通り典型的なロリ娘。それ以上は何も言うまい。
レズリー:名前等から判断して第一印象は男嫌いのレズビアン。実際は違ったが、いつもすました顔をして他人を見下しているような態度が気に食わない。
リンダ:金持ちのお嬢様。公式設定の性格では高慢ちきとなっている。確かに高慢ではあるが、彼女のセリフのほとんどがストレートすぎてはいるものの、道理に適ったものばかりである。だから私の彼女に対する印象は冷徹な合理主義者である。しかし、それは彼女の表面にすぎない。本当の彼女は寂しがりやの甘えん坊である。彼女のプライドは富と名声により守られている。エンディングにおいて、倒産し全てを失って本当の自分をさらけだした彼女はせつなくも美しい。全てを失った者は全てを得るのだ。
ライズ:彼女はドルファン王国現国王の実兄の娘である。彼は跡継ぎ問題に巻き込まれ自国を追われた。現在は身分を隠し、自分を謀ったドルファン王国に一矢報いようと敵国の傭兵の軍団長をしている。彼は自分の娘をスパイとしてドルファン王国に潜入させている。彼女は一見寡黙な美少女に見える。しかし、口調が淡白だけで案外おしゃべりである。敵であるはずの主人公に対して彼女は自分がスパイであるということをさすがに直接的ではないが、それと匂わすようなことをぺらぺらとしゃべる。後半の怒涛のようなイベントを見ると、製作者がいかに彼女に力を入れているかがわかる。しかし、あまりにも狙いすぎたのだろう。そのためにかえって的をはずしてしまったように思える。彼女が実は王族だとはっきり分かるのは最後の最後だ。製作者は消費者がその意外性に驚くことを期待したのだろう。しかし、ここで矛盾が生じる。どうして王族であるような身分の高い男が自分の娘を危険な敵地にスパイとして送り込むのか。彼には親としての良心はないのか。エンディングにおける彼女のセリフも興ざめだ。「私は騎士としての誇りを失った。」私は聞きたい。お前は騎士だったのか。お前は敵地から送られてきた秘密工作員ではなかったのか。私は後半のイベントに感動するどころか、こう言った物語の綻びばかりが気になってしまった。
キャロル:今が楽しければ良いと考える楽観的なギャル。この物語の中で最も現実のコギャルに近いのではなかろうか。エンディングで「私は実は子供のころ大人しくていじめられていた。」と追加設定を今さら付け加えても・・・
スー:素敵な男と幸せな結婚生活を営むことを夢見る女。製作者は狙って彼女をつくったのかどうかは知らないが、案外こういうキャラクターは少ない、いや、全くいないと言っても過言ではないだろう。彼女がいなければ、このゲームの魅力は半分以下に下がっただろう。それだけ私は彼女のつぼにはまった。彼女はかなりのお天気やだが、男はかくあるべきだ、女はかくあるべきだと自分の確固たる考えを持っているところは素晴らしい。エンディングのセリフはかなり短いが、その言葉の一つ一つに萌えの要素がつまっているように思われる。私はおそらく彼女以上に萌えることのできるキャラクターを一生見つけることができないだろう。
ジーン:男勝り。萌える要素を探すことすら難しい。
テディー:看護婦。彼女は看護婦というおせじにもきれいとはいえない仕事に就いているにもかかわらず、動物も触れないほどの潔癖症である。実はこの仕事に向いていないのかもしれない。それでも将来医者になろうという野望がある。彼女は、社会は1次元的に発展すると信じている近代論者であり、女性差別を徹底的に嫌悪するフェミニストでもある。よって、私は彼女の会話をどうも窮屈に感じてしまう。そんな彼女はエンディングで重要な決断をする。看護婦を止め、医者になる夢を捨て、主人公についていこうとするのだ。なんと潔い行動であろうか。そして彼女のセリフには一点の迷いもない。彼女のエンディングもスーと同様かなり短いが、非常に良くまとまっており、全キャラクターの中でもトップクラスの出来ではないだろうか。
クレア:やもめ。清楚可憐なイメージとは裏腹に水商売をしている。夫を失った欲求不満のために夜な夜な男たちと・・・変な想像は止めておこう。彼女のセリフはそつが無く、面白みにかける。それになにより水商売をやっていることが気になってどうも落ち着かない。
セーラ:眼鏡娘。病弱で大人しい文系タイプ。私は眼鏡娘にはそそられない。これは世界の七不思議の一つに数えても良いと思うが、恋愛系のゲームでは必ずといって良いほど眼鏡娘が登場する。眼鏡フェッチがいったいどれだけ存在するというのだろうか。対照的に、恋愛系ゲームにデブ女は絶対に登場しない。眼鏡フェッチの数はデブフェチの数とほとんど変わらない少数派であると個人的には思うのだが、果たして本当はどうなのだろうか。
プリシラ:ドルファン王国王女。なんというか王女のくせに性格から口調に至る全てにおいて品を感じとることができない。もうちょっと高貴な性格にしたほうが良かったのではなかろうか。そうしたらリンダとキャラクターがかぶってしまうかもしれない。彼女とリンダを足して2で割ったキャラクターが理想的であったと私は思う。
メネシス:眼鏡娘。今度は理知的な理系タイプ。16人ものキャラクター作りは大変なため製作者が安易で作りやすい眼鏡娘を量産したにちがいない。
アン:人魚。彼女は外見、性格ともに絶対に製作者が狙って作ったと断言できる。しかし、それが成功したかどうかは、はなはだ疑問だ。まず、人魚であるという設定がいかされていない。彼女はなぜか薬局で働いている。人魚と薬局、どういう連想をすれば、それらは結びつくのであろうか。さらに悪いことに、彼女は人魚であるという設定のためかほとんど会うことができない。運良く居場所が分かってデートに誘ったとしても、デートに応じる確率は他の女と同じため、しばしば断る。しかもその理由は「仕事が忙しいですから。」である。そうか、仕事の方がデートよりも大事か。なにか公式設定と性格が違うような気がする。エンディングは彼女自身のテーマソングが用意されていることからもわかる通り、かなり長い。しかし、長ければ良いというわけではない。前半のあのだらだらとしたセリフをなぜ製作者は作ったのだろう。「私には以前に恋人がいました・・・」エンディングでそんなことを淡々と聞かされてもどうかと思う。後半の自分自身が人間として生まれてこなかったことを嘆き、彼女の体が跡形も無く消えてしまう場面は涙を誘う。しかし、前半のセリフの出来の悪さがどうしても目だって、後半が台無しになってしまっている。エンディングを短くしてもいいから、前半のセリフをばっさり切ってしまった方が絶対に良かったと思う。
ノエル:主人公の分身であるピコが神通力を使って操った女。すなわち、体は主人公と全く認識がないノエルという女で、心はピコというわけである。彼女すなわちピコとのエンディングはどうも納得が行かない。なぜならば、このゲームを製作者自身が否定しているからだ。彼女すなわち製作者の消費者へのメッセージはこうだ。「空想に浸っていないで現実を直視しなよ。」ある古代の書は「現実は理想に勝る。これもまた空しい。」と述べている。平安時代の和泉式部という女は空想上の人物である光源氏に恋をしたが、それがはかなき理想に過ぎないとわかり、御仏の信仰に目覚めた。私も恋愛系ゲームなどただの絵空事にすぎないと痛いほどわかっている。それなのに、製作者がやくやく私達消費者に対してこのように説教するとは何事か。余計なお世話というものである。彼女のエンディングは全エンディングのうちで最悪である。
 どうも各キャラクターの紹介において否定的な表現ばかり使ってしまった。人間とは罪深い生き物だ。崇高なものほどそれの粗探しをしてしまう。もう一度言うが、前にも後にもこれ以上の傑作は存在しないと私は思う。最後に、各キャラクターのお気に入り度をランク付けする。私は細かくランク付けするのが嫌いなので4段階で評価する。
S  スー
A  ソフィア、リンダ、ライズ、テディー、クレア、セーラ、アン
B プリシラ
C ハンナ、ロリィ、レズリー、キャロル、ジーン、メネシス、ノエル
なお、評価基準は口調を重要視している。